突然ですが、伝統工芸にデザイナーの感性を入れるべき、という主張に対してどう答えますか?「伝統工芸は野暮ったい。現代的な感性を入れて、人目を引くようにすれば売れるはず」というように考えているなら、ちょっと待って欲しいと思います。
そもそも伝統工芸の多くはその土地に住んでいる人々の日常の用途に活用されてきたため、外の世界に向けて売るものでは必ずしもありませんでした。中にはお殿様が奨励し、パトロンとして庇護した結果、豪華絢爛となった彦根仏壇のような伝統工芸もありますが、実際のところ、工芸品の産地により、置かれた状況は異なります。
伝統工芸の価値が、過去の歴史により語られる信用から生み出されるものだとすると、歴史であったり、どのように人々に受け入れられてきたのかという部分を考えることなく、単に目立つデザインを施すことは危険です。伝統工芸品は高度に洗練された形として今の形態になっているため、今風のデザインを施してしまった結果、100円ショップの製品と区別がつかないという、笑えない状況が散見されます。そう、伝統工芸品は必然性があって、今の形になっているのです。それをむやみに変えてしまうと、その産地である必然性が消えてしまうのですね。
むしろ、当ホームページを構築された乾陽亮設計事務所の乾氏が語っているように、プロダクトデザインの限界を認め、作り手と使い手との間のコミュニケーションデザインに集中して取り組むという姿勢の方が、良い結果を導けると考えています。
「乾陽亮設計事務所:デザインと伝統工芸のアンビバレンス(上)」
http://www.inuiyosuke.jp/ja/writing/id/13/
全国各地に漆、紙、陶器、木工、仏壇、布などの工芸品はたくさんあります。そんな中、どうすれば他の産地ではない、自分たちの産地しかできない特徴が出せるのか?それを徹底的に考え、新たな製品開発と販路開拓をすることでしか、活性化は図れないはずです。
多くの「本物の工芸品」は、熟練の手作業の賜物です。そういった商品は無印良品や普通のセレクトショップでは値段がまったく合いません。どうすれば認めて貰える顧客に会えるのか、その視点から、当社も活動を行っていきたいと考えています。